2023-07-17 (Mon)
08:39
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30歳が脳の成人年齢
自分の脳の老化度合いがどうなのか心配になってきている人もいるかもしれません。
実は、自分の前頭前野がどのくらい発達、もしくは衰退しているのかは、MRI検査で前頭前野の皮質の厚みを測定することで、ある程度推測をすることができます。
前頭前野の厚さにはもちろん個人差があります。
それに成熟するまで長い時間が必要になります。
その間に個人差がついていき、ピークから衰退する時も同じように差がついていきます。
その背景には当然、生まれつきによる要素もあるのですが、現在わかっているエビデンスによると環境要因が大きいとなっています。
MRI画像を撮像すると前頭前野の皮質が肥厚して成熟するのは、人によって差がありますが、平均すると20代後半から30歳頃のようです。
その時期までに白質と呼ばれる部分が次第に大きく膨らみ厚みを増してくるのです。
白質とは、神経細胞から飛び出している突起状の部分である軸索側の神経線維が集まっている、いわば脳の配線にあたるところです。
ここは、生まれた時にはまだ裸電線のような状態で未発達です。
成長するとその裸電線の軸索に脂肪の層が巻き付いていき、むき出しのままだった電線に被覆ができたような状態になります。
被覆ができると活動電位が早く伝わっていくようになります。
これを跳躍伝導と言います。
跳躍伝導が起きるとそれ以前の50倍から100倍程度の早さで活動電位が伝わっていくようになります。
こうして脳は成熟した状態になります。
また、白質の周りに脂肪の層がついていく現象を髄鞘化と呼びます。
脳は、髄鞘化することによって成熟していくのですが、髄鞘化が起こる時期は脳の部位によって違っています。
早期に起こるのは、運動野のニューロンでこれは新生児の時期にすでに起こっています。
一方で本題である前頭前野の髄鞘化は非常に遅く、思春期ぐらいからようやく始まります。
早い場合で7歳、遅い場合では9歳くらいからですが、スタートが遅いとダメというわけではありません。
むしろ遅く始まるほうが、実は髄鞘化がより活発に起る可能性があると考えられています。
前頭前野の髄鞘化が完成する時期は、脳の他の部分の発達のピークよりも遅くなり、25~30歳前後になります。
つまり20代であれば、まだほとんどの人が発展途上であると言えます。
俗に若気の至りとは、まだ前頭前野が完成しきっていないので、抑制ができなかったり危険を上手く予測できずに蛮勇を振るったりする為と考えられます。
前頭前野が成熟していないことで相手への共感や抑制が不足して適切な判断ができない為と言えます。
前頭前野の髄鞘化が起こってくると白質が厚くなったように見えます。
これは脂肪の層が神経線維に巻き付いたことによるものです。
従来、前頭前野の髄鞘化は、灰白質と白質を比較すると相対的に灰白質が減って白質が増えたように見えるので、加齢による脳の機能の低下と見られていました。
しかし、今世紀に入ってこの常識は、覆されて今では成熟した前頭前野の要件として白質の厚さを重視する考え方が浸透してきています。
なので、ピークを迎える30歳前後からは、この厚さをいかにキープしていくかが大切であると言えます。
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