2023-05-21 (Sun)
10:32
✎
人間の心理、一貫性の罠
人間は自分が言い続けてきたこと、やり続けてきたこと、信じ続けてきたことをなかなか変えることができません。
そして、それまで見せてきた自分と矛盾しないように振る舞わなければいけないと思い込み無意識に縛られています。
これを心理学では、一貫性の原理と言います。
例えば。「私は保守です」と言うと保守のように振る舞い続けなけれればいけないような気分になります。
「あの人は嫌いだ」と公言してしまうと例え後から良い人だと感じても、一旦振り上げた拳をなかなか下ろすことができずに仲良くなろうとしなかったりします。
一貫性の原理と言いますが、人間自身本当は一貫していないという事実があります。
だからこそ「一貫しているべきだ」という認知が働くことになって、その背景を探る研究者も出てきたのでしょう。
甘いカフェオレが好きだけどブラックコーヒーも好き、巨人も阪神も好き、トランプは嫌いだけどアメリカ人は好き、韓国は嫌いだけどK-PIOPは好き、など一見すると矛盾しているような一貫していないような組み合わせは無数にあります。
それを言葉にして表に出すか出さないかはあっても、本来人間は特に一貫した好みや判断基準を持っているわけではないと言えます。
これは興味深い現象なのですが、気をつけないと人間は自身の一貫性について縛られているので柔軟な思考にならなくなるという罠にはまってしまうこともあります。
人間は、自ら編み出し構築してきた社会制度の理想をなかなか完璧に実装することができません。
これは、こうした一貫していなくてはという意識が働かなければ揺らいでしまう人間の本質的な多様性と社会制度をコントロールしようとする姿勢がマッチしていないからかもしれません。
民主主義の社会制度は「こうあるべき」という理想的なシステムとして、人間が考え出した社会の仕組みです。
しかし、社会を構成している人間は必ずしも一貫性を持っていません。
理想的な考え方をするトップダウン的な脳機能はもともと弱く、これに頼るようなシステムはそれ自体が脆弱なのです。
他人に共感できるようになるには年齢を重ねないといけませんが、直ぐに老化してしまいます。
暴走して、他人を拒絶して自分だけの正義に固執してしまうのです。
そのような器官が土台にある仕組みに頼るのは、誰でも危険なものと気付きそうなものですが、多くの人はそうは考えてはいないことでしょう。
では、人間が自らコントロールしなければならない制度に頼らずにAIに頼れば問題を解決できるのかというと、それも現時点では難しいのではないでしょうか。
現在のビッグデータとディープラーニングによるAIの構成では、むしろ総体としての人間が持っている一貫性のなさが過学習によって増幅される方向で結論が導かれると考えられます。
かえって誰もが望まない結果をもたらす危険性が高まってしまうのではないでしょうか。
- 関連記事
-
- バイアスのズレが友情をぶち壊し、簡単に争いが生じる
- 日本は優秀な愚かな国かもしれない
- バイアスは脳の手抜き、一元的な処理をしている
- 脳は加齢によって保守化する
- 正しさは関係ない!仲間内の正義を優先する人々
- 確証バイアスを増長させるネット社会
- 服従の心理を証明したアイヒマン実験
- 日本では考える人は使えない人にされる
- 自分が正しいと確信した時、人は正義中毒に陥る
- 人間の脳は賢くなり過ぎないようになっているのかもしれない
- 誰かを叩けば叩くほど気持ちがよくなる正義中毒
- 正義に溺れるのは人間の宿命、正義中毒は多様性を狭める
- 日本人の特性が変わるまで1000年、外国人も日本に住めば日本人になる
- 遺伝子で支持政党が決まっているのかもしれない
- SNSが見えなかった争いを可視化した
スポンサーリンク
↻2023-05-21