2022-12-27 (Tue)
11:30
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科学的にリベラルは勝てない
社会的なルールに関する取り決めの代表的な例は、大統領などの国家元首や議会などの選挙を通じて実現される民主主義です。
ここには人間ならではの現象が見られます。
政治における左右の集団の対立、いわゆる保守対リベラルの分裂は、実は脳の性質の違いが起こしているのではないかという社会心理学者でニューヨーク大学スターンビジネススクールのジョナサン・ハイト教授による本が、アメリカで話題になりました。
リベラルを新奇探索性(リスクを冒してでも新しい物事に挑戦しようとする性質)が高く、善悪や倫理観に親和性が高い判断をする人たちの集団と仮定して、保守を新奇探索性は低く、自分が慣れ親しんだものと違うものや違う判断を好まず、善悪や倫理観よりも慣れ親しんだことを選択しやすい集団と仮定します。
その結果、この本のなかでハイト教授はリベラルが保守に勝つことは科学的に不可能であろうと示唆しています。
ただこの主張は日本に暮らしていると実感はしにくいでしょう。
日本では、この種の研究が遅れているわけではなくて、実は日本を対象とするとうまく研究のデザインができないのです。
日本におけるリベラルと保守は、必ずしも政党としての政策とは一致していません。
どんな集団を支持して投票するとリベラルなのかあるいは保守なのかが分かりにくいのです。
日本においてリベラルも保守も与野党の対立ではなく、長い間、自由民主党内の派閥と言う形態で存在してきました。
党内の議論が国会の大方のシナリオを決めてしまうので、パブリックな場でリベラルと保守が議論するわけでも選挙の時に有権者が自らをリベラルなのか保守なのかと考えて行動をしているわけでもありません。
実情は、世襲や主審母体などの人間関係重視であり縁故的な要素が強い集団だと言う面があります。
日本では分析が難しい国になるのです。
一方でアメリカでは日本よりも明確にリベラル=民主党、保守=共和党と分けることができます。
民主党の中にはヒラリー・クリントンもいればサンダースもいますし、共和党の中にはトランプを支持する層もしない層もいます。
ですが、有権者が投票する時は自らが今のリベラルを支持するべきか保守を支持するべきか日本と比べると明確な考えの下で投票できます。
研究対象としては、アメリカは解析しやすいのです。
ハイト教授は結論としてリベラルが保守に勝つことができないとしています。
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