2022-10-07 (Fri)
09:29
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ネット社会が隠れていた争いを可視化
誰かを許せないという状況は、人間の歴史においても常にあったことです。
しかし、誰かを許せないという感情が込み上げてきても、実際に面と向かって「許せない」と宣言をするかどうかは全く別の問題です。
意見が対立する人同士が向かい合ってルールに従い建設的な議論をするのであればまだいいですが、ただ反対していると言うだけの理由で面罵し合うのは、子供のケンカのようではないでしょうか。
実際に誰にでも何かしらのしがらみがあります。
社会的な立場があり、損得勘定や忖度も働いています。
このような状況がブレーキとなって、リアルな人間関係では「許せない」という感情を飲み込むことが望ましいとされます。
例えば、平社員が社長に腹を立てたり、お客様であるクライアントに腹が立っても今後のことを考えると態度に出したりは普通しないでしょう。
本音は、作り笑顔の裏側に注意深く隠しているケースが大半ではないでしょうか。
特に日本人は、自分の意見をはっきりと言わない人が多いのでその傾向が強いです。
そして、この状況を可視化したのがネットであり、SNSの普及です。
匿名性を盾にして根拠の乏しい情報を書き込んだり、あるいは真偽不明な告発や犯罪予告が行われたりするインターネットの社会ができてから既に20年以上経過しています。
当初インターネットの世界は、アンダーグラウンド的なもので、社会の多くの人がそこに参加しているとは言えなく、あくまで現実社会と並行的に存在する別の世界だというコンセンサスがありました。
しかし、ツイッターなどのSNSがここ10年ほどで急速に普及したことによって状況は一変したと言えます。
SNSは、誰でも参加ができて発信できる場として地位が確立され、ネットの世界が現実の世界と重なり合うようになったのです。
今ではネットの情報発信は世論を動かすほどの力にまでなっています。
SNSの普及で一変した
ここ10年でツイッターなどのSNSが急速に普及したことによって状況は一変したと言えます。
今では、ネットは世論を動かすほどの力になっています。
このような状況では、許せないという感情のごく個人的な処理プロセスにいくつかの決定的な変化を生みました。
例えば、有名人の不用意な発言やスキャンダルなど分かりやすい不正義に対して、無数の一般人が積極的に言及をする状況を生んだのです。
有名人でなくても一般人でさえも、不正義や不正確な情報などネット上で公開をしてしまうと、一度も会ったことがない、会う可能性すらない赤の他人からもなじられてしまうようになりました。
これがエスカレートして複数の人から攻撃的なコメントが寄せられ、人格攻撃を含むようなやり取りが短時間の間に飛び交うようなこともあります。
いわゆる炎上です。
炎上が起こっている時は、多くの場合匿名アカウントが利用されています。
攻撃をする人は、よほどのことがない限り自分に直接被害が及ぶことがない安全であることが多いです。
もし面倒なことになったらアカウントを削除したり、放置したりすればいいことになります。
アカウントを削除しても見つけることは可能ですが、労力がかかるので、よほどのことがない限り探し出すまではなかなかしないでしょう。
このようにして人は、自分の意見に反する有名人に安心して誹謗中傷の言葉をかけて、炎上している一般人を見つけたらそれに加勢をして開かれてもいないのに自説を自信満々に開陳してしまうようになったのです。
自分が支持している著名人が他の著名人と論争でもしようものなら勇んで加勢をします。
その反面で今まで支持していた著名人の言動が受け入れられなくなると今度は180度態度を変えて攻撃の対象にすることもあります。
こういう世界に足を踏み入れずに少し引いたところから観察をすれば、SNSが「許せない」という人間の感情を可視化していることを確認することができるはずです。
見方を変えると誰かを許せないことで「自己を肯定したい」「自分の正しさを認めてもらいたい」という欲求の裏返しではないでしょうか。
どのかに存在している自説と反して攻撃をしやすい対象者を見つけ出してケンカをふっかければ、それだけ「自分は正しく生きる正義の味方だ」という認知が得られるわけです。
SNSは、正義中毒の人にとって手軽であり魅力的なツールではないでしょうか。
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